AD/HDコラムVol.5 AD/HD傾向がある人のための、‟起業”と‟キャリアデザイン”

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これまで、AD/HD傾向の性質や認知特性とあわせて、働く時に考慮すべき脳の使い方の傾向について述べてきました。

こうしたことを考え合わせて、皆さんにはどのような仕事のスタイルが向いているのかを、確認していきましょう。

遠藤野ゆり准教授
人には必ず、向き・不向きがあります。向かないことにしがみつくよりも、向いていることに力を注ぐ方が、良い結果を生むこともあります。

 

自分の認知特性を知ること

まず何よりも大切なことは、自分はどの認知特性が顕著なのかを把握することです。「努力しているのに報われない」「なんだか適正に評価されない」といった、負の感情のおおもとは、この認知特性に関する見識不足にあるといえるでしょう。

自分の認知特性を理解すれば、その特性に応じた対策も立てられます。例えば【不注意傾向】の高い人で、細かい事務処理が苦手な場合は、作業時間を他の人の3倍確保する、またはそういう作業が得意な人に代わってもらうことなどで解決できます。整理整頓が苦手で、すぐに物をなくす人は、あらかじめ「大事なものボックス」をつくって、重要なものはすべてそこに投げ込んでおく、といった方法もあります。こうした対処法は、いろんな整理術などの本などを参考にして、自分に合った方法を見つけていきましょう。

 

周りの人の認知特性を理解すること

自分だけでなく、周りの人の認知特性を知っておくことも有益です。「AD/HD傾向のあるひとが持つ認知特性以外の要因」でも述べたとおり、自身の仕事の取り組み方について考える際に、一緒に仕事をする人の傾向、仕事の進め方などを、あわせて考えていくことが重要になるからです。

例えば、言語優位の人は考えを「図で表現する」のが苦手ですが、「言葉で相手に伝えること」には長けています。一方で、映像優位の人は、「言葉で説明する」ことは苦手ですが、「図を用いたプレゼンテーションで表現する」ことが得意です。こういったお互いの向き・不向きを知っていれば、お互いの得意なスキルをもち寄って協力することが可能になるでしょう。

 

また、例えば、継時処理タイプの人は、同時処理タイプの上司の指示が分かりにくいことが多いのですが、「この上司の指示する順番がむちゃくちゃなのは、上司自身が順番などを気にしない人だからだ」と分かれば、上司と目指すゴールだけを共有して、作業の順番は自分で考えればよいのです。

このように自分自身や周りの人の認知特性を理解することは、仕事を効率化するだけでなく、それぞれの長所を知り、社会に活かすことにもつながるでしょう。それは自信となって、あなたのやる気を奮い立たせる大事なエネルギーにもなるのです。

 

適切なサポーターを得ること

自分の認知特性を知ったら、それを周りの人たちに伝えて共有することが大切です。これは起業に限らず、組織の中で働くときにも有効な方法です。

例えば「私は文書で説明されると混乱してしまいますが、図で示してもらえれば理解できます」や、「一度に二つ以上のことを指示されると混乱しますが、一つずつなら絶対に間違えません」など。大切なのは、ただ「できない」と断るのではなく、「こうすればできます」という解決策、代替案をセットで伝えることです。同時に、相手の苦手なことや傾向も理解しようとする姿勢をもちましょう。そうすれば互いの欠点を補い合い、長所を生かし合える良いサポート関係が、周囲の人と築けるはずです。

特に起業を考えることになれば、その業務内容が多岐にわたるため、他のスタッフからフォローしてもらう機会が、組織の一員として働く時よりも、格段に増えてくるでしょう。

 

また、逆にスタッフをカバーする場面も数多く出てきます。ハイスペックAD/HDは、そのエネルギーの大きさゆえ、スタッフの至らない部分をしっかりカバーしていくことも可能でしょう。けれども、それで自信過剰になるのは禁物です。長所は、裏返せば短所にもなるのです。そのことを謙虚に自覚し、自分の欠点を積極的にサポートしてくれるスタッフを確保すること、大切に育てていくことがとても重要になります。

 

事業を抱え込まず、信頼できる人への継承を

会社の経営において重要なのは、起業だけではありません。新事業が立ち上がった後は、それを継続していくことが課題になります。ところがAD/HD傾向の人は、起業できたとしても、事業の継続となるとあまり情熱が湧きません。それはなぜでしょうか。

彼らは常に新しいことに興味津々で、どんどんアイデアが湧き出てきます。興した会社が軌道に乗って、順調に進みだせば、ハイスペックAD/HDの興味は、もう次の新しいことに向いてしまうからです。

こうした場合は、その事業を信頼できるスタッフに継承していく、という発想も大切になります。というのも、ハイスペックAD/HDの場合はつい自分の能力を過信し、その不注意や衝動性ゆえに、できないことまでも自分でやろうとしてしまうからです。

また、会社をゼロからつくる起業と、事業の維持・継続では、求められる資質は全く異なるもの。「起業できたのだから、大きくなった後も自分ひとりで経営できる」という考えは禁物です。むしろ、事業の継続に向いた資質をもつ次代の人にうまく会社を継承するまでを、ひとつのプロジェクトとして捉えるとよいでしょう。

AD/HDの特性は、社会的な成功、組織を大きくすること、大きな利益を上げることを目的にした起業は向いていません。また、何事かを長く継続するのも不向きです。むしろ、新しい価値を創造する、最先端のものを追い求める、あふれてくるアイデアを形にする、といった、自身の興味を突き詰めた結果を社会に生かしていく形での起業が向いているでしょう。

まとめ

このように、リスクを恐れず興味関心に向かって突っ走れる人が、良きサポーターを得て、また時には苦手なことをガマンしながらよりよい起業ができれば、それは、このタイプの人にしかできない、オリジナリティあふれるキャリアデザインになることでしょう。

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