AD/HDコラムVol.1 AD/HD傾向を持つ人は、意外と多いという事実

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ここ数年、メディアなどでもその言葉を見かけることが多くなった、AD/HD。実は結構な人に当てはまるものです。

AD/HDとは、Attention Deficit Hyperactivity Disorderの略で、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)といった、3つの症状がみられる状態のことです。「発達障害」として一括りにされてしまいますが、「こういった傾向を持つ人」という大きな視点でみると、当てはまる人が多いことが分かってきました。

遠藤野ゆり准教授
まずは、AD/HD、AD/HD傾向とはどのようなものなのかを、見ていきましょう。

 

AD/HDは病気ではなく“脳のタイプ”の一つ

AD/HD(注意欠陥・多動性障害)は一般的に「発達障害」として捉えられており、「社会人としての基本が出来ていない」と思われてしまうことが多いようです。例えば

  • 書類の提出を先延ばしにする
  • 確認漏れやケアレスミスが多い
  • 時間にルーズ
  • 片づけられない
  • 忘れ物が多い
  • 悪意なく言った一言で相手を怒らせてしまう

などが、典型的な行動として挙げられます。結果的に、ビジネスの場においては、企画力があり仕事も早く有能なのに、本来もっている能力までもが不当に低く評価される、ということになってしまいます。

こうした説明に「自分があてはまる」と感じたら、もしかすると「AD/HD傾向にある」といえるかもしれませんが、確実に言えることは、AD/HDを病気や欠点として捉えるのではなく、生まれ持った“脳のタイプ”の一つとして捉えるべきである、ということです。

顔や骨格、知能や運動能力などが一人ひとり違うように、脳の機能も人によって違いますし、脳には未だ解明されていない部分もあります。そうした脳の機能の中で特徴的な傾向のことを、日本では「発達の凹凸」や「特性」として、表現しているのです。

しかし、こうした凹凸がみられるだけでは「発達障害」とは判定されません。ほとんどの人は多かれ少なかれ、こうした発達の凹凸を持ち合わせているからです。医師からAD/HDとの診断が下されるのは、脳の機能にAD/HD傾向の特徴があり、さらにその特徴が“社会生活において大きなハンディキャップになっている”と認められた時なのです。

 

発達障害かどうかは、社会との関係で決まる

発達障害を「発達の凸凹」と表現するのは、その特徴が「病気」と誤解されたり、「特別に機能が弱い」と断定されたりするのを避けるためです。それぞれの人の持つ特性が社会的に好ましいものか否か、その人が生きやすいのか生きにくいのかは、その人が属する時代や、社会によって違ってきます。

例えば、世界三大美人の一人とされる楊貴妃は、太っていたことで知られています。食料に困窮するような時代においては、「太っていること」は、豊かさと美の象徴だったからです。日本でも、平安時代に「美人」とされていたのは、細目でしもぶくれの、いわゆる「うりざね顔」でした。こうした特性を持った女性が、現代において美しいと評価されるのは難しいでしょう。美しさで優れているか劣っているかは、その時代や国によって変わってゆくものなのです。

発達についても同じです。発達障害の人たちが持つ「発達の凸凹」は、それは今の社会で求められる発達の順番やバランスに対して均等ではない、というだけなのです。

歴史上の人物の中にも、AD/HDだったのではないかと言われている人がいます。例えば、坂本龍馬や太宰治などです。

坂本龍馬は、なかなかおねしょが治らず、自分で袴をはくこともできないような子どもでした。泣き虫で勉強ができないなどの理由で、今でいう「いじめ」にあい、姉から献身的に教えを乞うという生活を送っていました。しかし、14歳の頃に入門した剣術の世界でめきめきと頭角を現し、複数の流派で免許皆伝となりました。33歳という若さでこの世を去るまで、坂本龍馬が残した功績は、あまりにも有名です。

これは、「過集中」や「衝動性」により、結果的に「大きなことを成し遂げた」として、後世に語られるべき人物へと転身していったという好例です。その一方で、AD/HD特有の「注意欠陥」という特性が目立っていたり、ごく親しい人物(姉)以外とのコミュニケーションが上手では無いなど、「発達の凹凸」がみられていたと考えられます。

つまり、社会が高いレベルのコミュニケーション能力を求めれば、コミュニケーションが極端に不得手なタイプの人は、ハンディキャップを背負うことになってしまう――。このように、その人の特性が時代にあわなければ、「障害」として認識されてしまう危険性もはらんでいるのです。何が障害なのかは、基本的にその人の特性によって決定されるのではなく、社会の方が決めてしまうのです。

AD/HD傾向の程度は、社会との関係に即して、次の3つのレベルに分けられます。

(1)AD/HD傾向のうちの一部があり、ときどき困ってしまう人

(2)AD/HD傾向のうちの一部があり、かなり頻繁に困っている人

(3)AD/HD傾向によって、明らかなハンディキャップを背負っている人

自分はどの状況にあてはまるのか、考えてみてください。例えば(1)のレベルであれば、多くの人が当てはまるのではないでしょうか。

 

発達障害は治らない?

発達障害の特性は、知力や運動能力と同じように、先天的な要因によるものが大きいとされています。それでも、一定のトレーニングを受けることで、ハンディキャップとなる「特性」を緩和できる可能性があります。

例えば、顔や骨格、筋肉のつき方は生まれつきですが、毎日の食事で固いものをよく噛み続ける習慣がある人は、顎が発達して顔つきが変わってきます。運動面でいえば、並大抵の努力だけでは一流のアスリートになれませんが、毎日鍛錬すれば確実に筋力や瞬発性が向上し、技術も身についてきます。

生まれつきの運動能力がさほど高くなくても、適切なトレーニングを重ねることによって、かなりの水準に達することもできるのです。

発達障害の要因と考えられる、脳のさまざまな機能にも、同様のことがいえます。相手の表情や、会話に込められる「独特の文脈」などを読み取る力は、対人コミュニケーションにおいて重要ですが、それを読み取りにくいタイプの脳を持つ人は、対人コミュニケーションに苦労するでしょう。

しかし、意識的に「相手の表情や言葉に注意をむける経験」をたくさん積むことで、次第に相手の気持ちを想像できるようになったりします。もちろん、「生まれつき相手の気持ちを敏感に察することが得意な人たち」の水準まで達するのは難しいと思われますが、努力は必ず一定の成果をもたらすでしょう。このように「生まれもった特性」は、ちょっとの努力で簡単に変わるものではありません。しかし日々努力すれば、少しずつ変化していくことは十分ありえるのです。

発達障害の傾向がある人も同じです。仕事上のミスや人間関係のトラブルに出会った場合、意欲や態度、誠実さなどの精神論で解決できるものではありません。具体的にその特性を変えていくことを意識して、日々のトレーニングを積み上げることによって、多少は特性が変化していくもの、と捉えるとよいでしょう。

それと同時に、自分の特性を無理に変えるよりも、自分の特性を生かす環境づくりをしてくことが重要になります。このサイトでは、そうした「特性を生かす環境づくり」の考え方を紹介していきます。

 

ADHD傾向の人がもつ3つの特性

発達障害のひとつであるAD/HDの人たちにみられる行動として、日常的には

  • せっかち
  • おっちょこちょい
  • 忘れ物が多い
  • 作業(仕事)が雑
  • むらっ気が多い
  • 落ち着きがない
  • 協調性がない 
  • ぼんやりしている

などがあり、こうした行動は、AD/HDの「新しい刺激に対して敏感ですぐに反応する」という特性により起こります。

また、違う見方をすれば、AD/HDの特性はおおまかに

  • 〈注意欠陥(attention deficit)〉
  • 〈衝動性( impulsivity)〉
  • 〈多動性(hyperactivity)〉

の3つに分けられますが、全てのAD/HDの人がこの3つの特性を備えているとは限りませんし、中には多動性の特性をほとんどもたない「ADD」(注意欠陥障害)と呼ばれる人も多くいます。先に上げた特性のうち、「ぼんやりしている」のは、そもそも周囲の状況に注意が向いていない、刺激として捉えられていない、という「注意欠陥障害」の現れなのです。この3つの特性が、どんな形で現れるのかを見ていきましょう。

タイプ 特徴 典型的な行動例
注意欠陥 「不注意」「集中力がない」とも表現される。注意を向けるべき対象へ、十分に注意が働かないが、同時に、いったん好きな物事に集中すると他のことに目がいかなくなる ・書類の締め切りを何度も忘れて提出が遅くなる

・スマートフォンのリマインダー機能を使うがスマートフォンを見ること自体を忘れてしまう

・仮にリマインダーでやるべき事を思い出しても「再提出」を忘れてしまう

・集中すべき話を聞いているうちに、他のことを考えるので「ぼんやりしている」ように見えてしまう

衝動性 何か行動に移す前に、一息ついて考えることができないため、周囲からは、行動が突発的で、計画性が無いように見えてしまう。 ・深く考えずに発言して相手を傷つける

・悪気なくうっかり他人の秘密を暴露する

・会話の流れを考えずに発言してしまう

・急に怒り出す

・よく確かめずに物事を判断して結論を出してしまう

多動性 文字通り多く動く性質で、過活動ともいう。学校では、その行動を「教室でじっとしていられない」といった言葉で説明されることがある。

 

・じっとしているべき場で動き回る

・そわそわと落ち着かない

・貧乏ゆすりが多い

・何かに駆り立てられるかのように活動してしまう

これら3つの特性は複雑に関連しているため、問題となる行動の原因が、3つの特性のいずれか1つに絞り込めるとは限りません。

こうした認知の特性が障害と判断されるかどうかは、前述のように「程度の問題」です。とくに子どものうちはこうした傾向を誰でも持っています。それが、成長するにつれて目立たなくなり、コントロールできるようになるのが一般的です。しかし、自分で上手くコントロールできず、社会との関係が上手く築けない事が多くなると、ハンディキャップとなってしまうのです。

 

まとめ

例えば、AD/HD傾向の人に顕著にみられる「ものすごくやりたくない仕事を億劫だからと後回しにする」という行動などは、誰しも一度や二度は、経験があるでしょう。AD/HDの人たちが必ずしも特別というわけではなく、「傾向を持つ人たち」を含めると、実は意外と多いのだということに、気付いて頂きたいのです。

 

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AD/HDコラムVol.2 AD/HDの傾向と起業への適性について考える その1

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